エンジニアのためのアドラー心理学

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アドラー心理学とは

心理学者アドラーの独自の理論に基づく「個人心理学」であり、人間理解の心理と言われています。「人を動かす」のデール・カーネギーや「7つの習慣」のスティーブン・コヴィーにも大きな影響を与えています。近年では、アドラー心理学の書籍「嫌われる勇気」が100万部のヒットとなりドラマ化されたことでも有名です。

技術書典で入手した「エンジニアの心の整理術」という本でアドラー心理学について語られていたので、「嫌われる勇気」を読んで解釈を新たにしてみました。
参考:『技術書典6』に参加してきた

人は変われる、問題はその勇気

原因論

原因論とは過去が現在を規定するという考えです。

  • パソコンやネット、ゲームばかりやっていたから、コミュニケーション能力が低い

これが原因論の例ですが、アドラー心理学では原因論を否定します。

  • パソコンやネット、ゲームばかりやっていたこと(原因)と
  • コミュニケーション能力が低いこと(結果)は

関係ないと捉えます。もし関係があるならば、同じ過去を経験した人は全て同じ現在となってしまうからです。パソコンやネット、ゲームばかりやっていた人でもコミュニケーション能力が高い人はいるでしょう。

目的論

一方で肯定されるのは、今からの目的によっていくらでも人は変われるという目的論です。

いかなる経験も、それ自体では成功の原因でも失敗の原因でもない。(中略)
自分の経験によって決定されるのではなく、経験に与える意味によって自らを決定するのである。

引用:「嫌われる勇気 – 自己啓発の源流「アドラー」の教え -」より

これまでの人生で何があったとしても、今後の人生をどう生きるかについてなんの影響もない。
問題は変わることの難しさ・勇気の問題だと説きます。これを、

  • 幸せになる勇気:これまでの自分の性格を捨てて変わろうとする勇気
  • 勇気づけ:今の自分を受け入れて結果によらず前に進む勇気を持つ

と呼びます。

エンジニアとしての目的論

自分はまだ初心者だからまだこの技術を扱ったり、このタスクをこなせる状態にはないと成長のチャンスを逃すのではなく、自分の技術力が弱いならばそれを補う為にどうすべきか考えて行動するのが健全な考え方になるでしょう。

私も未経験エンジニアの一人ですが、『未経験エンジニアだったとしても、その過去に引っ張られてはいけなくて、今この場所で抱くゴールによってどこまででも自分は成長できるのだ』とマインドリセット出来るかどうかが重要です。私見としては健全な状態を保つコツは以下だと思っています。

  • 小さなゴールを設定して、成功体験を積む
  • Write Code Every DayやGitHubの草駆動開発、資格を定期的に取る
  • マネージャの立場であるならば、タスク粒度を細かくしてあげる

このブログでもGitHubのコミット歴を載せていますが、毎日草が生えていることが自分の成長の確かな記録になるので心が穏やかになりますw

劣等感とコンプレックス

『劣等感』と『コンプレックス』、日本語では同義に扱われますがアドラー心理学では異なります。

優越性の追求と劣等感

人は赤ちゃんという無力な存在として生を受け、その無力な状態から脱したいと願う普遍的欲求を持ちます。これを「優越性の追求」と呼びます。言い換えると、「理想の状態を追及すること」になるでしょう。掲げた理想に到達できていない自分に対してまるで劣っているかのような感覚を抱く、これを『劣等感』と呼びます。

劣等コンプレックス

劣等感自体はバネにして利用するべき感覚ですが、劣等コンプレックスとは劣等感が強くなりすぎると何かの言い訳に使い始めるようになります。これが『劣等コンプレックス』です。

  • 例:私は要領が悪いかから昇進できない
  • 例:私は学歴が低いから成功できない

さきほどの「自分はまだ初心者だからまだこの技術を扱ったり、このタスクをこなせる状態にはない」と感じてしまう状態もそれです。

エンジニアが陥りがちなのは優越コンプレックス

これがさらに発展してしまうと自己防衛本能として『優越コンプレックス』になります。権威付けや自慢など自分があたかも優れているかのように振る舞うのです。

  • この機能を作るのは大変だった
  • この設計は自分が一人で手がけた
  • 自分はAさんよりも早く開発出来る
  • この仕様を把握してるのは自分だけ
  • ○○は××なのにそんな間違ったコードを書くな

このような技術/経験マウンティングをするエンジニアは優越コンプレックスに陥っていると言えます。

己に向き合い、受け入れる

大切なのは、優越性の追求は他者との競争ではなく個人の問題だということです。アドラー心理学が個人心理学と言われる所以です。

健全な劣等感とは自分と他者との比較ではなく、今の自分と理想の自分との比較であるべきなのです。Aさんは評価されているのに自分は全く評価されないとコンプレックス状態になってはいけません。

不完全な自分・時にはバグを出してしまう自分、そんな「できない」自分を受容する勇気を持つこと。
そして、「できる」ようになるために一歩ずつ前に進んでいくことが大切なのです。

殊、エンジニアは「プログラムが動く/動かない」の2元論の世界に居ます。故に、「100点の自分/0点の自分」で捉えてコンプレックス状態になりがちな職業だと思います。今は50点でも良い、100点に向かうためにどうするか?を考え続けたいものです。

全ての悩みは人間関係

他者の期待を満たすために生きてはいけない

  • ○○さんにはこういう役割を担ってほしい
  • ○○さんにはこういうスキルを身につけてほしい

こういった他者の期待を満たすために生きてしまうと、自分の思うように生きられず、結果他者の期待をなぞった人生を生きてしまいます。

それと同時に、他者もまたあなたの期待を満たすために生きてはいません。

あなたは他者の期待を満たすために生きているのではないし、わたしも他者の期待を満たすために生きているのではない。他者の期待など、満たす必要はないのです。

引用:「嫌われる勇気 – 自己啓発の源流「アドラー」の教え -」より

他者の課題を切り捨てる

大事なのは課題の分離、自分の課題か?他者の課題か?否かです。

  • 自分の課題には他者を介入させず自分で立ち向かう
  • 他者の課題には土足で踏み込まない、本人が解決するべき課題であることは伝える

ことが重要です。

例えば、スキル的に未熟でもっと学習しないと成長できないエンジニアが部下についたとしましょう。それでも、「勉強が足りない」「もっと技術書を読みなさい」などと言ってはいけません。部下のスキル不足はあなたの課題ではなく、部下の課題だからです。部下はあなたの期待を満たすために生きていません。例え上司-部下の関係でも、あなたの意見通りに行動する義務はどこにも存在しないのです。

馬を水辺に連れて行くことは出来るが、水を飲ませることは出来ない

では、どうしたら良いのか?

アドラー心理学は放任主義を主張するものではありません。

行うべきは、勉強するかしないかは本人の課題であること・勉強しないことによるリスクを説明した上で、後輩が勉強したい・成長したいと思った時にいつでも『支援』できるように準備をしておくことです。

後輩が勉強するかしないかは上司であるあなたの課題ではありません。あくまで後輩本人の課題です。

アドラーはこの状態を「馬を水辺に連れて行くことは出来るが、水を飲ませることは出来ない」ということわざで表しました。

マネジメントで褒めてはいけない

優越性の追求は他者との競争ではないこと、他者と比べて劣等コンプレックス・優越コンプレックスを抱いてはいけないことを書きました。これは他者を仲間だとみなす考えです。言い換えると、対人関係は、縦ではなく横の関係ということです。

  • コンプレックスは自分を下に見た縦の関係
  • 他者の課題への介入は自分を上に見た縦の関係

だからです。

マネジメントも同様で、「予定よりも早く開発できたね、すごい!」と褒めてはいけません。褒めること自体が自分を上に見た縦の関係だからです。

縦の関係で行為のレベルを評価するのではなく、横の関係で「ありがとう」と存在のレベルを感謝しましょう。

共同体感覚を持つ

他者を仲間とみなし、縦ではなく横の関係でつながる感覚のことをアドラーは「共同体感覚」と表現しました。人は、他者よりも優越である自分に価値を感じるのでもなく、他者の期待に応えられた自分に価値を感じるのでもなく、自分が共同体にとって有益な存在だと思えたときに自らの価値を実感できます。

同じエンジニア同士、技術レベルの差で縦の関係を作るのではなく、お互いを認め、時には助け合うことで「私は誰かの役に立っている」と思えるとエンジニアライフが幸せなものになるのだと思います。

          
    

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