【及川卓也氏特別講演】情報技術の進化の歴史から紐解く、技術者が個人として活躍し続けるためのヒント

日本のコンピュータ・サイエンスの第一人者 及川卓也さんの講演会に行ってきました。

ベンチャー界隈でよく用いられるリーンの考え方はコンピュータ・サイエンスの歴史では昔から起きていることであること、これからのインターネットやAIがどうなっていくか考えさせられるの話でした。

歴史は発散と集中を繰り返しているし、それは最終的に「エントロピー増大の法則」の通り、どんなに束縛しようとしても自由でオープンなものであろうとするのだと思います。

及川さんの経歴

  • 大学卒業後、DECでメインコンピュータの開発に携わる
  • 97年からMicrosoftでWindows Vistaの日本語版および韓国語版の開発を統括
  • 06年からGoogleでウェブ検索やGoogleニュースをプロダクトマネージャとして担当
  • Google ChromeやGoogle日本語入力などのプロジェクトをエンジニアリングマネージャとして指揮
  • 15年からIncrementsでQiitaの開発に携わり、17年に独立

とまあ、DECで東海岸のアメリカ企業を見て、シリコンバレーも見てきたすごい方です。

未来の予測は難しい

The Best Way to Predict the Future is to Invent it. by Alan Kay

Alan Kayはパーソナルコンピューターの父。

グラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)やオブジェクト指向の原理を発明した人で、ノートPCのアイデア・設計を考えた人と言って過言ではない。

その人曰く、「未来を予測する最も良い方法はそれを発明してしまうこと」

GitHub Universeの目的はdefining the future of software

GitHub Universeという開発者会議の基調講演のメッセージは以下。

No one can actually predict the future
but we can be ready for it
and that’s largely our jobs as software developers
To be adaptive and be ready for the future

コンピュータ・サイエンスの歴史

  • IBMと7人の小人(1980年代)
    • 巨大コンピュータの時代
    • 対抗馬7社を合わせてもIBMの売上に満たない
  • DECなどミニコンベンダーの登場(1990年代前半)
  • HPなどUNIXベンダーの登場(1990年代後半)
  • Dell, Microsoft, Intelなどのパーソナルコンピュータ(2000年台初頭)
  • Google, Amazonなどのクラウドやスマートデバイス(2000年代後半)

今はCyberとPhysicalが融合
あらゆるところからデータが集まり、データを解析することで、新たな価値が創出される

つまり、変化がめちゃくちゃ早い(Dog Year:犬の1年は人間の7年)

登場当時は「おもちゃ」レベルの技術に置き換えられていく(≒イノベーションのジレンマ)

技術が与える影響を短期的には過大評価し、中長期的には過小評価をする傾向にある(アマラの法則)

シリコンバレーの文化

現代の二都物語

  • 近年の西海岸と80年代東海岸
  • オープン vs. クローズド
  • コミュニティ(ネットワーク)の存在有無
  • 競争と協働
  • 多彩な人種

シリコンバレーの特徴

  • 激しい競争
  • 年功序列なし(能力主義/成果主義)
  • 終身雇用という慣習はあまり無い
    • アップ OR アウト
    • 成長しない分野からは撤退
    • 成長する分野に必要な人材を社内外問わず募集
  • グローバル展開
    • 英語でのサービスのグローバル展開の容易さ
    • 人種のるつぼなので、グローバル展開しやすい

IBMがAppleの牙城を崩したケーススタディ

  • Appleはジョブズの思想をベースにした自前主義(NIH Syndrome)
  • IBMもNIH Syndromeだった
  • が、いち早く遅れを取り戻すために半導体・ソフトウェアを外部から調達
  • 技術仕様が公開されてサードパーティが相次ぎ、本機の有用性を高めた

偶然にもプラットフォーマーとしてIBM・マイクロソフトが結果的に台頭した

プラットフォーム戦略として以降ケーススタディされることになる事例。

WEBの成功の秘密

  • 1982年にOSIという国際標準を作ろうとした
    • 仕様書が分厚くなりすぎ、難しすぎて普及しなかった
    • TCP/IPに負け、OSIの7階層モデルという概念だけが残った
  • Rough consensus and Running codeの精神
  • 単純なものが残る(SMTP, HTTP)
  • 複数サーバ間で情報の連携ができるMashup思想
  • XHTML v.s. HTML5
    • 標準化を取り決めてから実装:×
    • 実装事例が生まれたら標準化する繰り返し:◯
    • Think Big, Start Small, Scale Fast

イノベーションの手法

  • 開発手法:WATERFALL ではなく AGILE
  • この考えを企画段階に転用したのがLEAN
  • 開発と運用を分けないDEVOPS

いずれも、仮説を基に反復を繰り返し、 真理に近づこうとするもの

チャットと電子メールにみる思想の違い

  • 現在のチャットアプリには相互運用がない
  • メールやブラウザは当然相互運用できる
  • チャットだけがWEBの思想とは反しているのはなぜか?
    • メールやブラウザは研究が中心の牧歌的な時代に生まれたもの
    • 90年代以降、WEBに多くの企業が参入。チャットアプリは商用利用が目的
    • 顧客データを他社に渡さないという意味で相互運用出来ないのは当然
  • インターネットはオープンなものであったはずなのに誰かがコントロールしつつある
  • 誰も支配できないブロックチェーンが台頭してきたのはこういう背景もある

過去から学ぶ4つの大事なポイント

  1. 多様性を育む
  2. スケールさせる思考を念頭に持つ
  3. Creativity loves constraintsのアンテナ
  4. 仮説検証・実験の思考を育む

1つの組織に属しながら、他のコミュニティなどにも属することで、スキルと経験の幅が広がる。

10%増ではなく、10倍を目指せるプラットフォーマーを意識する。

制約を覆そうとして生まれる創造性にアンテナを張る。

LEANで企画しAGILEで開発しDEVOPSで運用するサイエンティストの考えを持つ。

IT社会の今後

  • AIがプログラムを書くようになる(30年前から言われている)
  • 機械 vs. 人間 OR 機械+人間
    • チェスでは人とAIの組み合わせが強い
    • Amazon GOでも酒類販売エリアには人がいる
  • そもそもITがないと生まれないビジネスが増えてきた
    • Marc Andreessenは2011年時点ですでにこう言っている
      • Software is eating the world, in all sectors.
      • In the future every company will become a software company.
    • あの会社はうちと違ってIT企業だから、と解釈すると間違う
    • 【IT×◯◯】という事業が増えていく
  • コンピューターを使う人間と 使われる人間に分かれていく
  • 内なる声に耳を傾け試行する(外的動機づけではなく内的動機づけ)
  • おもちゃを見つけた子どものような気持ちを大事に
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